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「………」 シン・シー……そう名乗った男の行動を、ヴァイスは一部始終観察していた。 言動から察するに、彼は人外……つまり、人間ではない存在を敵視し、人間の味方を自称しているようだ。 そして、そのために容赦をしないことも理解した。 「………」 理解した。……が、それだけだ。少なくとも、ヴァイスの価値観に照らし合わせると、その行動は全く許容できない。無論、この男に同情などと言う安い感情はない。つまり、結論は一つ。 『面白くない』。 ヴァイスの娯楽は、他人を利用して他人を「壊す」……具体的には、喪失や自己嫌悪の輪廻に叩き落とすこと。 あるいは、それらの発起点になるかとも思ったが、あれではとても使えない。 妖怪やその主などは心底どうでもいいが、あの男、シン・シーの行動は非効率的に過ぎる。 (下らない区分けに拘るとは……全く、ワタシの遊技場を荒らして回られては困るのですよ) 奴がこのまま動けば、いかせのごれの妖怪は一挙に危機に陥る。その中には、アースセイバー・ウスワイヤに属している者も少なからず存在する。仲間意識の強い彼らは対抗措置を取るだろう。あるいは、それに乗じてホウオウグループが介入して来る可能性も大いにある。 そうなれば、いかせのごれは人知れぬ混乱の渦に叩き込まれる。そしてそうなってしまえば、せっかく良い「役者」の揃っているこの場所で動くことが難しくなる。 ああいう効率の悪すぎる行動をとる人物は、ヴァイスにとっては嫌いなタイプだ。それだけなら放っておくが、自分の邪魔になりそうだというなら話が別だ。 (ここはまず……ん?) 「そこにいる人間は、人外の味方なのかな…?」 (む) どうやら向こうは自分に気づいていたらしい。確か本人が「能力のオーラが見える」と言っていたから、その力によるものだろう。 「……さて。少なくとも味方ではありませんがね」 わかっているなら隠れる意味はない。軽く、ヴァイスは死角から姿を現し、その男、シン・シーに相対する。 「………」 改めて見ても、この男はかなり珍妙な格好をしていた。が、それがかえって、闇の中に溶け込むような、不気味な「非存在感」を現していた。 「……何ですか、その格好は」 「あなたに言われたくはないなぁ」 確かにヴァイスの格好も大概珍妙だが。 「確かに。ですが、今そんなことはどうでもいいのですよ」 「へぇ? ま、いいや。ところで、あなたは何をしてるのかな。どうして僕の後をつけて来たのかな」 「何……次のシナリオの種にならないかと思ったのですがね」 「シナリオ、ねぇ。もしかして噂に聞く、人を壊すためのあれかな」 帽子の鍔を片手で上げる。どうやら、向こうは思ったよりこちらの事情に通じているらしい。 「まさしくその通りですね」 「そうか……噂は真実だったってわけか」 「それで、どうしますか『人間の味方』。人を壊すワタシを排除しますか?」 「そうだね……今は他にすることがある。それは」 シンの台詞を、ヴァイスは先取りして言葉に変える。 「害なす人外、妖怪の完全排除ですか」 「あれ? 何だ、わかってるなら話が早いや。僕は、あいつらを全員排除するつもりなんだ」 「……単刀直入ですね」 「余計に言葉を飾るのは趣味じゃないんだ。……ともあれ、人外の味方じゃないならいいや。僕の敵はあくまで人外だからね。……じゃ、これで」 軽く言って、その場を立ち去ろうとするシンの、 「待ちなさい」 その足下に、ヴァイスの放った投げナイフが突き刺さった。 視線がわからないが、明らかに怪訝な顔をしている。 「……何のつもりかな」 「見ての通りですが」 瞬間、その場に敵意が満ちる。 「……嘘はつかないのが信条じゃなかったのかい? それとも、それ自体が嘘なのかな? やはり、人外の味方なのか、あなたは」 「いいえ、違います」 鋭い声で言うシンに、ヴァイスは明確な否定で返す。 「人外の味方をするのではありません。アナタの邪魔をします」 「理由は何かな?」 「アナタにこのまま動かれると、巡り巡って逆にワタシが動きにくくなるのです。それは困るのですよ」 「……僕は『人間の味方』だけど、振りかかる火の粉を払うのは吝かじゃない」 す、とシンもナイフを取り出す。 「殺しはしない……けど、少し大人しくしていてもらうよ。あの人外達を排除するまでは、ね」 「だから、それをされてはワタシが困るのですよ。あなたこそ、邪魔をするなら消えてもらいます」 他者から見れば、いずれも狂人。しかれど、互いに思惑があり、それが相容れない。となれば、戦うのみ。 「では、行くよ」 「来なさい、『正義の味方』とやら」 シンとヴァイスの戦いは、かつてこのストラウルで何度か行われた派手なものではなかった。でありながら、状況はシンの圧倒的不利だった。 「人間の味方」を自称するシンの攻撃は、あくまでも「人間」であるヴァイスの命を狙ったものではなく、動きを封じることを意図したもの。逆に、シンを邪魔者とみなしているヴァイスの攻撃は、殺せるならば今すぐ殺すほどの鋭さを持っていた。 「く、速い!」 「手加減している場合ですか? 死にたくなければ殺す気で来なさい」 しかし、対するヴァイスの方も攻めきることが出来ない。明かりのほとんどない闇の中、シンの姿は時折霞むようにして視界から消えるため、決め手となる一撃を叩き込めない。対するシンの方は能力でヴァイスの位置を捕捉出来る。この差は決定的だった。 シンはその心情ゆえに致命打を繰り出せず、ヴァイスはこの状況ゆえに致命打を打ち込めない。 おまけに場所が場所だった。ここはストラウル跡地、「アンバランスゾーン」だ。理由もなしに何かが起こる。ここで常識や「そんなはずはない」という観念は通用しない。予想外の何かが起きる可能性を常にはらんだ場所での戦闘だ、両者とも慎重にならざるを得なかった。 「むッ!?」 「させるか!」 互いに決定打を出せないまま、応酬だけが延々と続く。そんな繰り返しに、先に音を上げたのはシンの方だった。 「やれやれ……これ以上続けていても埒が開かない。ここらで退かせてもらうよ」 「逃がすと思いますか?」 シンが一歩バックステップしたタイミングに合わせ、ヴァイスがナイフを真っ直ぐに投げつける。が、 「む?」 その一撃は、闇の中に溶け込んだシンを捉えられず、カラン、と乾いた音を立てて転がった。 「僕は人間の味方だ。必要とあらば、あなたとも協力する。人外を排するためなら、僕は手段を選ばない」 闇の中から聞こえるその声に、ヴァイスはため息を一つつき、返した。 「……では、一つ忠告をしておきましょう。とある家に、近く人外がひとつ来ます」 「へぇ? それは見逃せないな……」 「ですが、手を出すのはやめておきなさい。下手をすると痛い目ではすみませんよ」 脅しではない、実感からの本音として、ヴァイスは答えを知りつつも言う。案の上シンの答えは、 「忠告は受け取っておくけど、人外は見逃せない。どんな力を持っていようと、全て排除するだけだよ」 それを最後に、気配は消えた。その場を去った男に、ヴァイスはもはや届かぬ警告を送る。 「問題は、その人外そのものではありません……『彼女』の許には、何人もの守護者がついています。アナタとは絶対的に相容れない者達が、ね。それに、アースセイバー所属の者を襲った以上、アナタももはやただではすみません」 真っ先に頭に浮かんだのは、赤と白、特徴的な髪を持った姉妹と、格闘の達人。そして、異能殺しの男。彼ら彼女らとは、シンは絶対に相容れまい。 「……まぁ、後は地球の剣達に任せるとしましょうか」 物憂げにひとりごちると、ヴァイスもまた、闇の中に姿を消した。 狂人と「正義の味方」の邂逅 (敵か、味方か) (知る者も、知らぬ者も) (容赦なく、巻き込まれていく)
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赤坂Zum Eichen Platz 千代田線の赤坂から歩いてすぐのフランツィスカーナの店 フランツィスカーナのヴァイス生 フランツィスカーナのヴァイス、ヴァイス・デュンケル、濾過ヴァイス ソーセージ盛り合わせ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/naianakikaku/pages/2674.html
その日、空橋 冬也はその男と偶然に遭遇していた。 自分にとって忘れがたいトラウマを植え付けた張本人、漆黒を纏う最悪の愉快犯。 「!? ヴァイス=シュヴァルツ……!!」 名を呼ばれた本人は、「おや」と空を見上げていた顔を降ろして振り返り、何とも意外そうな表情をしていた。 「誰かと思えば、いつぞやの……その後、あの氷使いとはいかがですかね」 「お前に心配される謂れはない……!」 目の前にいるのは紛れもない敵、しかし冬也個人には戦う術はほぼない。 ヴァイスがその辺をわかっているかどうかは不明だが、人気のないこの状況で向こうがかかって来ないのは不幸中の幸いだった。 簡単に逃げられないのはわかっている、ならば少しでも情報を引き出すまで。 決意して、目の前の男に「万象透視」を使おうとして、 「!!」 「……ふむ」 直前で踏みとどまった。ヴァイスの能力「マニピュレイト」は目を合わせた相手を操る。意識を集中するために「見る」必要がある自分の能力とは相性が悪かった。 「存外冷静ですね」 「……お前、ここで何を」 問うと、ヴァイスはまた空を仰ぐ。 「さあて、ねぇ。何かをしようとは思っていたのですが……はて、何をしたかったのでしょうかね」 空々しい言葉だったが、冬也は警戒しつつも違和感を覚えていた。 自分の知る、あるいは仲間達の語るヴァイスにあった、どこか壊れたような狂気の気配が欠片もないのである。 むしろ、獏也に通じる自然な感覚があった。 「……お前……本当にヴァイスか?」 思わずそう尋ねてしまったのも、無理からぬことと言えよう。 対するヴァイスは、落ち着き払ってこう言った。 「その問いが、『今、ここにいるワタシがヴァイス=シュヴァルツであるのか否か』という意味でしたら、その通りと答えましょう。それも真実です」 まるで、他にも真実があるかのような物言いだった。 冬也の困惑を意に介さず、ヴァイスは言う。 「空橋 冬也さんでしたか。アナタには、ワタシが確かにここにいると、断言できますか?」 「何……?」 断言も何も、実際に目の前にいるのだからそうするしかない。 そう思う冬也をこそ、ヴァイスは嗤う。 「何がおかしい!」 「ククク……いえ、ね。『確かにここにいる』と断言されれば、真実と認めざるを得ないのですよ。事実としてワタシはここに『も』いるワケですから」 相変わらず人を煙に巻く物言いだったが、冬也の認識はその中に聞き逃せない一言を捉えていた。 「……ここに『も』いる、だって?」 「そう、ここに『も』です。ワタシはここにいる。そして、秋山神社にいる。『運命の歪み』の本拠にいる。ストラウル跡地にいる。いかせのごれ高校にいる。UHラボ跡地にいる。ホウオウグループの支部にいる……」 「な、に?」 不意にすっ、と笑みが消える。 「ワタシはね、空橋 冬也さん。『遍在』しているのですよ」 「遍、在?」 「『遍』く『在』る。もっとも、『こう』なったのは少し前の話ですがね。そう、ワタシの死亡記事が出たあの日ですよ」 その記事は冬也も知っていた。左目のない、黒ずくめの男の身元不明死体が発見され、今なお身元がわかっていないというあのニュースだ。 ウスワイヤ情報ではその後、回収された遺体が消えた、と掴んでいる。 「諸事情あって一度死にましたが……これによってワタシという存在は、遍在へと変わりました」 「…………?」 意味のつかめない冬也に、ヴァイスはなおも語る。 「今のワタシは、場所も、時間も関係なく『在る』モノです。過去も、未来も関係なく、ワタシは『在る』。ですから、そう」 「語られていない過去の事件に、ワタシが関わっていたとしても、何の不思議もないのですよ。例え遙かな過去だろうと、今のワタシが『在る』のですから」 「な……!」 「アナタは不思議に思いませんか? このいかせのごれは、世界全体を見ても類のないほど、能力者や超常の存在が闊歩している。言うなればここは、神の手違いが集約された場所なのですよ」 ヴァイスは言う。それはつまり、このいかせのごれには世界……運命の歪みとでもいうべきモノがあふれているのだと。 「歪みが大きくなれば、その分事象にもズレが生じ、やがてはいかせのごれ全体のバランスの崩壊を招きかねません。そう、明らかに超常の事件でありながら、未だ解決されていない事象などがね」 トリガーの定かならぬ事象は、いずれ巡り巡っていかせのごれ全体に波及する。 「今のワタシは言うなれば、世界の歪みの化身にして、それを是正する者。霧に隠された事件に『原因』という形で関わり、世界に調和を齎すための必要悪。それが、アナタ達の知る、あの死亡記事以降のワタシです。………都市伝説に近いですかね?」 「………!」 「以前のワタシには人としての過去がありましたが、『こう』なった時点でほぼ無意味となりましたよ。ま、どうでもいい話ですが」 絶句する他なかった。それでは、まるで……。 「まあ、ワタシ個人の趣味も多分に含まれていますがね。大仰な使命感など背負った覚えはないのですよ。ワタシはどこまでも運命の歪みであり、それ以上に演出家なのですから」 くつくつと、心底愉しげに笑う。 「ともかくそういうワケです。今のワタシは、殺すことは出来ても滅ぼすことは出来ません。例えここにいるワタシを殺したとて、仮に存在を消し去ったところで、それはワタシの『遍在』を否定するには足りないのですから」 「……何度殺しても、何度滅ぼしても、また現れるっていうのか」 「そういうコトです。もっとも、だからと言って素直に殺されるつもりはありませんがね」 それでは、と一礼し。 「長話はこれまでとして、失礼させていただきます。今後の健闘をお祈りしますよ、アースセイバーの皆さん」 前触れもなく、不意に、ヴァイスの姿が消えた。 「…………」 残された冬也は、ただ呆然と、彼のいた場所を見つめていた。 道化師、遍く (暗躍はなおも続く……)
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AOT/S50-044 カード名:“これから起こること”リヴァイ カテゴリ:キャラ 色:緑 レベル:1 コスト:1 トリガー:0 パワー:7000 ソウル:1 特徴:《兵団》・《武器》 トーマ「ウォール・ローゼに!巨人が!!」 レアリティ:C 進撃の巨人 Vol.2収録 ・関連カード カード名 レベル/コスト スペック 色 備考 “人類存亡の命運”エルヴィン 0/0 500/1/0 緑 対応カード
https://w.atwiki.jp/naianakikaku/pages/2679.html
「そこまで、だ。ヴァイス=シュヴァルツ」 「む……」 その声が響いた瞬間、常に余裕と嘲笑を崩さないヴァイスの表情が、はっきりと顰められた。ばっ、と後ろに飛びのく。 彼にこの顔をさせるのは、二人。 一人は以前関わって以来、ちょっとした勘違いからヴァイスを追い続けているシャルラ=ハロート。 そしてもう一人が、この男。 「またアナタですか。ブラウ=デュンケル」 「お互い縁があったということだ。これがな」 現れたのは、色合いと顔だけが違う、ヴァイスの鏡映しのような男。ブラウ=デュンケルを名乗る男だった。 その目線が、ちらりと「シャットアウト」で隔離された千鶴に向けられる。 「……奴にいろいろ言っていたようだが、遅きに失したな」 「? どういう……」 「今の意見は、あるいは異見は、奴が『人間』であるという前提がなければ成立しないからな」 つまり、今のヴァイスはもはや人間ではないのだと。 「死体が発見された時点で奴は人間としての存在を放棄している。今の奴は、ヴァイス=シュヴァルツの姿を取った現象そのものだ」 「……間違ってはいませんがね」 「だろうな。でなければ、貴様の操り人形だった俺がこうして自由意志で動ける理由がない」 聞き捨てならない言葉に詠人とマナが一瞬反応したが、ブラウは一瞬だけ目線を向けるとまたヴァイスを見る。 「……さて、さっきの指摘について何か言うことはないのか? 貴様のことだ、反論はいくらでも用意しているだろう」 今のヴァイスは、言うなれば「ヴァイスという男を構成していた要素」を拾い出して具現化させたような存在だ。 それくらいはあり得るだろう、と予測していた。 「そうですねェ。そもそもワタシは、特に何かを求めて事件を起こしているワケではありませんしね」 「愉快犯だからな、貴様は」 「ワタシが楽しければそれでいいのです。……と思っていたのは『生前』の話でしたが」 つまり? 「今は本当に何一つ目的はありません。言うなれば事件を起こすことそのものが目的です」 「……何だと?」 「今のワタシには時間すらも無意味な概念です。かつてのワタシは完全な愉快犯でしたが、今はそのようなレベルでは動いていません」 「どういうことだ……なら、何故僕を!?」 詠人の叫びにも、何でもない事のように答える。 千鶴へ話しかける形で。 「チヅルさん、先程アナタはワタシの演出を独りよがりであり、情愛という視点が欠けているがゆえにつまらない、ゆえに演出家を気取るのはやめた方がいいと。神の真似事であるがゆえに下らないと、そう言いましたね」 しかし、 「ワタシという存在は、その根幹が『神』という存在、あるいは概念の模倣という側面を持っています。ですから、どう足掻こうとワタシのすることは神の模倣でしかないのですよ」 千鶴の言うような「面白さ」が現れることは、ヴァイスである限りあり得ない。 「ありきたりなのも当然です。何故なら、ワタシはそもそも造り出すことを最初から求めていないのですからね」 「それは」 「『人間』だからこの辺りが限界……ですか? さあて、それはどうでしょうかね」 今も昔も、この男は容易に本音を悟らせない。表に出ている言葉や態度が真か偽か、確かめる方法はないのだから。 「今のワタシの存在概念は『原因』。答えなき問いの答え、理由なき事象の理由となるコトがワタシの存在です」 つまりは「だいたいこいつのせい」である。 「そこに情愛など必要ないのですよ。重要なのは、それによって事象が確定するコトです。それがどれほど有り触れた、つまらないものであっても、原因となるならば問題などないのですよ」 面白さを求める段階はとうに過ぎ去り、今は演出そのものが手段に切り替わっている。 千鶴の指摘は「作品」に対する評価のようなものだったが、ヴァイスはそもそも他者の評価というものを求めていない。ましてや今は、「作品」はただの手段。 他者からみてどれほど下らなかろうと、それは問題ですらないのだ。 「同時に、ワタシ個人の目的というものも消えました。まあ、演出を続ける中で何かしら面白そうなことが起きないか、とは考えていますが」 それでもやはり、本質は変わらない。人を操って嘲笑する、愉快犯。 ヴァイス=シュヴァルツとはそういう遍在だった。 「……あなたは……何なんですか」 千鶴の呟きは、まさに心底からの疑問、と言った風情だった。 ヴァイスは帽子を深くかぶり直して視線を隠し、その裏から言う。 「さあて、ね。演出家、道化師、愉快犯、人形遣い、あり得ざる遍在、眠らぬ死者、神の手違い、あざ笑う者、闇の彷徨者……」 さて、 「ワタシは、何なのでしょうねェ……?」 黒ずくめの男の姿をしたナニモノカは、そう言ってくつくつと嗤った。 永遠にも似たしばしの静寂の後、ブラウが口を開いた。 「……貴様が何なのかなど、どうでもいい。ただ、殺すだけだ」 「さすがにそれは御免被りたいですねぇ。このワタシが死んだところで、それはヴァイス=シュヴァルツという存在の消滅を意味するところではありませんが……」 どこまで本気かわからないような声音で、ヴァイスは首を竦めつつ言う。 そんな黒ずくめの男を複雑な感情を宿した目で見る、詠人。 「……だとしても。僕が、お前を見逃す理由にはならない」 「見逃す見逃さないではありません。ワタシがどうするか、なのですよ」 逃げようと思えばいつでも逃げられる。ただ、退屈しのぎにこうして話に興じているだけなのだと。 「それに、今まで自分が為したコトを棚に上げて言いますか? 厚顔無恥とはこのコトですね」 「言われる筋合いはない、お前には」 ばっさりと切り捨てたのはマナだ。詠人を庇うように一歩前に出る。 「今の言葉を返してやる、そっくりそのまま」 「……ふむ。これは困りましたねェ」 全く困ってなどいない、むしろ面白そうな顔で、ヴァイスはその言葉を受け取る。 「お前の言葉はただの呪い。聞く価値はない、全く」 「では、どうしますか?」 「決まっている」 きり、と睨み付け。 「―――ここで、終わらせる」 差し上げた手で、 「―――“ウェーブファンクション・リミテッド”」 指をひとつ、打ち鳴らす。 瞬間、場の空気が、いや流れが、明らかに「変わった」。 「!!? こ、コレは!?」 「……馬鹿な!? この力は……」 はっきりと驚きをあらわにしたのは、自身既に現象そのものに近いヴァイスと、マナの成したことを「見」たブラウの二人。 ついて行けず当惑する詠人やシュロ達に、マナは淡々と説明する。 「私の『ウェーブリンク』は波動を操り、また同化する力。超音波、電波、真空波、電磁波、物質波、脳波、重力波、光波……波とつくものは全て私の思うが儘」 それは、何を意味するのか? 「……ねえ。『波動関数』って知ってる?」 「……わかんないよ、マナちゃん。それ、何なの?」 「波動関数とは、簡単に言うと『何かの状態そのものを波として表した概念』のコトよ。波というものは、重ね合わせの概念を実現する……つまり、1つのナニカが、全く異なる状態を同時に取り得る、そんなコトを引き起こせる」 しかし、 「世界の構造上そんなコトは無理。状態は必ず、1つに収束される」 「つまり……どういうことなんだ?」 「……私の“ウェーブファンクション”は、物質、状況、なんでもいい、それらの状態を波として捉える技法。そして“リミテッド”は、それを私の望む形に収束させる力」 ここに来てマナが何をしたのか理解した面々が、一様に最大の驚愕を表に現した。千鶴や、ヴァイスですらも。 「ま、さか……」 ブラウの絞り出すような声に、マナは―――ニヤリ、と嗤う。 「―――そうよ」 「私は、私の望むままに状況を規定することが出来る。世界を波として捉え、そこに私という『観測者』を規定することで、淘汰された可能性を引き寄せて実現化する……それが、私の特殊能力」 ……もはや、絶句するしかなかった。そして、それを聞いたランカとアズールは、まさにそれが齎したであろう結果に思い当たって驚愕した。 「! ほ、ほな……」 「まさか、お母さんや琴音さんが帰って来たのって……!?」 「多分、それも“リミテッド”の作用ね。死んで『ここからいなくなった』二人を、私は観測して『ここにいる』と認識していた。そこに諸々の要素が重なってたまたま“リミテッド”が発動して……」 「……マナちゃんの観測した『二人がここにいる』って認識を、現実に持ってきたってワケか」 シュロの推測に「恐らくは」と注釈しつつ頷くマナ。 つまり彼女は、正しく「世界を左右する力」を手に入れたのだ。 その力を、彼女、夜波あらため白波 マナはどう使ったのか? 「……この力も万能ではない。あったコトをなかったコトには出来ない」 事実として規定されている事柄を覆すことは出来ない。アカネと琴音の場合は、『ここからいなくなったが、もう一度戻って来た』という流れを造り上げたのであり、二人が死んだという事実を覆したわけではない。 「けれど、その逆。なかったコトを実現させるコトは、出来る」 つまりは、予想外の事態を任意に引き起こせる。 「この状況を覆すために、私が望むのはずばり介入者」 「助っ人?」 「そう。ヴァイス、お前を倒すために、あるいは状況を進めるために、もっとも適任となる存在」 マナがそこまで行ったところで、突然「流れ」が途切れた。 同時に“リミテッド”がその作用を顕在化させ、マナが望んだ「適任」がどこからともなく、現れる。 「……ほら。もう来てくれたわ」 微笑んでマナが見やる、そこにいたのは――――。 集束する、可能性 (少女の指先が導く未来は―――?)
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-ストラウル跡地- 「…?」 パニッシャーを全て破壊し、理人と少し会話をしていた海猫は、どこからか何かが崩れた音が響いたのを耳にした。 「どーしたの?」 「あ、いや…」 頬をかく海猫。 (また誰かが襲われてんのかな…) もしそうだとしたら、守人として放っておく訳にはいかない。 そう思った海猫は車椅子の方向を変える。 「海猫?」 「悪いけど、しばらくどっかで待ってて。必ず戻るから」 「え、ちょ―――」 「佑をよろしくね!」 理人の言葉を待たず、海猫は車椅子を走らせどこかへ去っていった。 (困ったなー…) しかしどうする事も出来ないので、とりあえず一角のビルの中で海猫を待つ事にした。 -いかせのごれ某所- (くっ…) 先程の三人組から逃げるべく、交番から離れたヴァイス。 しかしそう簡単に見逃す訳もなく、三人組は彼の後を追いかける。 路地裏に逃げ込む、と。 「―――!」 三人組の内、面をつけた少女―――今は狼を模した面をつけている―――が壁をハイスピードで掛け、ヴァイスの前に回り込んだ。 よく見ると所々に茶色の毛が生え、耳が犬のそれに変化している。 後ろにいる、マスクをつけた少年が言った。 「お前がヴァイスだな?」 「…もしそうだとしたら、どうするんです?」 「お前を『始末』するのサ!」 少女が駆け出した。 鋭く伸びた爪をヴァイスに向ける。 だがヴァイスはそれを容易く避けた。 「おやおや、物騒な」 「お前が言うかねえ」 「!」 見上げると、この二人といた水色の髪の青年が宙に浮く銀の鉄柱の上に乗り、それより短い数本の鉄柱をヴァイスに向かって落としてきた。 「…ッ!」 避けるヴァイスだが、最後の一本が彼の頬を掠った。 すると今度は白い布の様なものが飛び交う。 「これは…包帯!?」 「ただの包帯ではないぞ」 それらを操ってるらしいマスクの少年が言った。 彼の言葉通り、包帯が当たった所には傷が出来たり切断されたりしている。 (包帯が刃物の様になってるのか…) 初対面である事もあり、苦戦を強いられつつあるヴァイス。 だが一つだけ策がある。 (この三人組がチームを組んでるのは間違いない) ならば当然、そこには『繋がり』がある筈。 ニヤリと笑うと、ヴァイスは懐からナイフを取り出し、少年に向かって放った。 少年はそれを避け、包帯を手放すとそれに乗り、滑走するかの如くヴァイスの方へ駆けていく。 跳躍し、蹴りを入れようとしたその時。 ガシッ! 「! しまっ……ぐおっ!!」 足を掴まれ、壁に強く叩き付けられた。 その衝撃で体を起こすのに手間取る少年。 ヴァイスは彼の服の襟を掴み、マニピュレイトを発動する。 その途端、少年が脱力した様な態を見せた。 「お前! コハクに何をしたのサ!?」 「…その目で確かめてみては?」 と、襟から手を離す。 すると。 シュバァアッ! 『!?』 コハク、と呼ばれた彼の包帯が仲間の二人に牙を向けた。 突然の事に驚きながらも二人は何とかそれを避ける。 「コハク!? どうしたのサ!?」 「まさか…マニピュレイトを!?」 「ご名答。さあ、どう戦うのでしょうかねえ」 「卑怯者!!!」 「何とでも言いなさい。それよりホラ、後ろに」 「!」 少女が振り返った先には、無機質な目で包帯を振るうコハクの姿が。 「コハク…わっ!」 「何ボケッとしてるんだ尓胡!」 「ご、ごめん…」 仲間の青年に助けられた少女、尓胡は涙を目に溜めている。 「シザキ、どうしよう…」 「泣いたって何の解決にもならないだろう!」 「じゃあどうしろって言うのサ!?」 「お喋りしてる暇はありませんよ」 『ッ!』 再び襲ってきた包帯を避ける二人。 そこでシザキと呼ばれた青年が、ヴァイスに向かって鉄柱を飛ばした。 が。 「な…ッ!」 鉄柱がヴァイスを貫く前に、包帯がそれを切り刻んだ。 「くそ、こいつを狙っても駄目か…ッ!」 「コハク…」 未だ涙を目に溜めている尓胡はコハクの顔を見つめる。 と。 「…?」 「…尓胡? どうしたんだい?」 「………何だ、そういう事か」 「え?」 「ごめんコハク…早く気付くべきだったサ!」 包帯に飛び乗り、コハクの元へ走り出す尓胡。 攻撃を避け、彼の元に辿り着くと―――。 ザシュッ! 「!?」 「な…?」 尓胡の爪がコハクの喉元を切り裂いた。 だが次の瞬間。 コハクの姿が人の形をした包帯へと変わった。 「み…身代わり!? いつの間に―――」 「全く…いつまで待たす気なんだと思ったぞ」 「!」 ナイフを手にし振り返るヴァイス。 だが反応が遅かったか、包帯の攻撃を喰らってしまった。 「ぐ…ッ!」 「さて、殺すべきだろうが…白波からの依頼の事もある。捕縛に留めておこう」 「白波…白波 シドウの事ですか?」 「ああ、そうだ…ん?」 「…花弁、サ?」 視界に入ってきたのは、水色の花弁だった。 と。 「…何か、ねむ、くなって…き……た…サ…」 「尓…胡、何寝ちゃっ…てる…んだ……い…」 「まさ、か…仲間、が…………」 その場に眠り込む三人。 それを見たヴァイスは安堵の息をついた。 「助けを求めた覚えはありませんが…まあ感謝します」 「………」 物影から喪服を着た少女が現れる。 「確か名前は…澪でしたっけ。あのフード男のパートナーを務めている…」 「……うん」 「……何故怯えるんです?」 5mは離れた物影で微かに震えている澪に呆れるヴァイス。 「ごめんなさい………大人とか、背の高い人…苦手だから……ごめんなさい」 「…まあいいです。とりあえずこの場から去りましょうか」 依頼失敗 -いかせのごれ郊外- 「ひーまひーまー…仕事来ないかな」 プルルルル… 「んあ、電話だ。…はーいもしもし」 『どうも、周です』 「あーどうも周さん。仕事?」 『はい。本の挿し絵を描いて欲しいと』 「あーはいはい。て事は文はあるの?」 『出来てなかったら電話してません』 「あははーそりゃそーだ。じゃあファックス宜しくねー」 『分かりました、ナナさん』 「ちょっと、その名前は捨てたんだってば」 『あ、すいません…』 「…過去のウチなんて、恥でしかないんだから」 『………』 「とにかく、今のウチは――― ”J.J(ジェーン=ジェナ)”なの。分かった?」
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琥珀色の黄金水に白い泡。 つまりはビールなのだが、ビールの入ったグラスを高らかに掲げるとやたらと陽気な声。 「乾杯!!」 言うや否や一気に呷る。 続いて二杯目のビールを溢れんばかりにグラスに注ぎながら我らが兄貴、ヴァイスはご機嫌であった。 どれくらいご機嫌なわけかというと、「歌でも歌い出したい気分だ、んんっふ~ん♪」 まぁこんな感じ。 ウサギもかくもやという瞳をジトッと半目にしながらシンはご機嫌な兄貴を冷たく見つめていた。 「いや~たまには男だけで飲むってのもいいやねぇ~」 「あのヴァイスさん…」 意を決したのか、そろりと声をかけるが、ヴァイスは何処吹く風といった感じだ。 「おう、シン遠慮せずぐいぐい行けよ。奢りだ」 「いや、だからヴァイスさん……」 尚も言い募ろうというシンを他所に、ヴァイスはおつまみを物色しつつ早くも二杯目を空ける。 「お、何だよチータラが無いじゃんよ~カマンベールチーズしか無いって」 「オッサン!!」 おつまみのチョイスに文句を言い始めたヴァイスにシンがキレた。 「オッサンじゃな~い!!何だよシン。飲め飲め!!」 「飲めじゃねぇよ……俺未成年だっつーの」 「細かい奴だな~」 「細かくない!!百歩譲って俺は良いとしてもエリオまで呼ぶとはどういう了見だよ」 視線をヴァイスが移してみれば、手元のグラスを困ったように見つめる赤毛の少年の姿がある。 「ビールは苦手か?ワインにするか?」 「だからそういう問題じゃねぇ!!」 「何だよ……」 「飲み会をするのは勝手だけどさ、何で俺とエリオが入ってるんだよ」 飲み会のメンバーを見ればシンの疑問も最もであった。 エリオとシン、そして普段は中々接する機会の無い無限書庫の司書、ユーノの姿があった。 ユーノはただただ苦笑してグラスをちびりちびりと舐めるようにしている。 「飲むんなら普通に同僚とかで良いだろ?」 憮然としたシンに対して、ヴァイスはチッチッチと人差し指を振る。 その指をへし折ってやろうかこの野郎、そうシンが静かなる殺気を高めると、三杯目を空けたヴァイスがにやりといやらしい笑みを浮かべる。 そしてエリオをビシリと指差す。 指されたエリオはキョトンとしている。 「素直系ショタっ子!」 「は?」 何を言っているのかわからないという顔のシンを他所に、ヴァイスは次いでユーノを指差す。 「中性的美形!!」 「は?」 そして、最後にシンを指差す。 「ツンデレ美少年!!!」 「は?」 ヴァイスは立ち上がると、酒瓶を手に堂々とした様子で叫ぶ。 「どうせ飲むなら、お兄さん綺麗どころと飲みたい!!」 「死ね!!」 間髪いれずに叫ぶシン。 叫ばれたのはある意味とても真理であった。 しかし、悲しいかな、シンには理解出来なかった。 「見ろ!!この隙の無いメンツ!!合コンしたってここまでのクォリティーは期待出来まい」 「アンタの頭の中は隙だらけだな……」 ヴァイスの手には名酒『美少年』。 その酒瓶で頭をかち割ってやろうかとシンは思った。 きっとからんと良い音を立てるであろう。 ユーノは苦笑しつつワインを口にしている。 同じ男かと、シンは自分を棚に挙げながら内心呟く。 エリオは観念したようにぺろぺろと子犬の如く酒に手を出す。 頭痛を覚えながらヴァイスをもう一度見つめると、兄貴は元気にサムズアップ。 「何ご満悦って顔してるんですか……」 「バッカ、オメェ汗臭い野郎共と飲まず、かといって後腐れのある女でもなく、それでいて目の保養になってるんだ。もうサムズアップしかねぇだろ」 「散々人を合コンに誘ってるのって誰でしたっけ…?」 「色々後が面倒なんだよ!!具体的に言えばブッキングしてだなぁ…」 「もう良いです」 「事の最中に『来ちゃった♪』なんつーてもう…」 「もう良いっつてんだろうがよ!!」 「『来ちゃった♪』ならまだ良いけどよ、『来ないの♪』とか言われた日にゃあ、お前…」 「最低だ……性病移されて真実の愛とかお寒い事を言いながら肉欲に溺れつつ不治の病とかそれ何てケータイ小説?みたいな感じで死んでしまえ」 「ワンブレスで言い切った!!ツンデレだなぁ少年~~で、シンちゃんはいつ頃お兄さんにデレてくれるのかにゃ?」 「未来永劫ありません……つかデレって何ですか!」 「まぁまぁ、シン君」 シャム猫の如くツンケンしているシンと、それを楽しそうに受け止めるヴァイスの二人に待ったを掛けたのは第三者のように傍観していたユーノであった。 「ユーノ先生……」 「折角男だけでこうして騒ぐ機会をヴァイスが設けてくれたんだから、お言葉に甘えようよ」 「先生まで……」 「さっすがユーノ。わかってる♪伊達にスキンケアは怠ってないなぁ」 「オッサンは黙ってろ!!」 「酷い!!シンちゃん酷い!!パパそんな子に育てた覚えは無いぞ!!」 「既に出来てるのかよ!!酔っ払い!!!」 苦笑するユーノの前で、シンとヴァイスのじゃれ合いが再開された。 ◇ 「う~~……もう無理ですぅ~」 シンはゆっくりとした動きで赤い髪を撫でる。 チクチクとした手触りが自分の髪質とは異なり、それが面白くて撫でる手を休めない。 シンに撫でられているのは早々に酔いつぶれたエリオ。 顔を赤くし、自身の膝枕で潰れてしまっているエリオを眺めながら、シンは疲れた視線を向こう側で転がっているモノに向けた。 「ごぁぁ~~んごぉ~~」 空いた酒瓶を抱えながら、高鼾をかいて眠っているヴァイスを見ると、シンは深々と溜息を吐く。 ユーノはそれを見てクスクスと笑う。 憮然としたシンの視線を受けても、尚、楽しげにユーノは微笑む。 「ヴァイスさん……飲むだけ飲んで潰れちゃったよ……ったく……」 「はははは……でも少しは気が晴れたんじゃない?」 「え?」 思いも寄らぬ言葉に、シンはギョッとさせる。 ユーノは微笑みを絶やさずに、何杯目かになるワインを空ける。 その目元は微かに赤い。 「何か物思いに君は耽る事が多いみたいだね。今も」 「そんな事……」 「シン君。ここにはなのはもフェイトも、誰もいないよ?」 不意に向けられた真っ直ぐな視線に、シンは言葉に一瞬詰まる。 幾ばくかの逡巡の後、観念したようにシンは視線を膝の上のエリオに向けながらぽつりと零す。 「正直……こうやって楽しく騒いでると……不安になる事があるんです……」 「不安?」 「俺はここにいても良いんでしょうか?」 その声に、縋るような色が押し止められている事に、ユーノはシンという少年の強さを感じた。 けれども、見え隠れする程に弱っている、それもまた事実だと思いながら、シンの言葉の続きを待つ。 「俺は他所の世界から来た異邦人で………そんな俺がここに居続けて、皆と仲良くなって……」 「場違いだって……思うのかい?」 こくりとシンは頷く。 紅の瞳が寂しげに揺らめく。 喉を潤すように、ユーノは残り僅かなワインを流し込む。 「君は……昔のフェイトみたいな目をしてるね」 「……隊長ですか……?」 「うん。ここに居ても本当にいいのか、常に自問自答しているみたいな……そういう目をするね」 「でも……俺は隊長と違います……」 「さっき言ってた異邦人っていう話かい?」 「…………俺は他所の世界から来た……ホントの余所者だ……それが皆と深く関わっても……」 「なのははね」 「え?」 「なのはは魔法なんて関わりの無い子だったんだ……僕がミッドチルダからやって来るまでは。 僕もなのはにとっては異邦人だよ。フェイトにとっては自分の世界を壊してくれたなのはは異邦人以外の何者でもない。 みんなそれぞれがそれぞれにとっては異邦人なんだ」 「それは……それは屁理屈ですよ……」 「いいんじゃないかな、屁理屈で」 「いいって……そんな……」 「誰も幸せにしないような理屈なんていらないと思うよ。少なくとも、君は幸せじゃないみたいだ」 「幸せ……わかりません……」 「じゃあ、聞くけど、なのは達……スバルやティアナが悲しい顔をしているのを見てシン君は幸せなのかな?」 その言葉に弾かれたようにシンは顔を上げると、勢い良く首を振る。 正直なその反応に、ユーノは笑みを浮かべる。 真っ直ぐな紅の瞳は一見苛烈なようで、その実優しい。 それが伝わってきただけで、ユーノはシンを好ましいと思った。 「じゃあ、やっぱり誰も幸せにしてくれない理屈だ。僕が見た限り、君が落ち込んでて幸せになるような人は六課にはいない」 「そう……なんでしょうか…?」 「そんなんです」 きっぱりと言い放たれた言葉に、シンは呆気に取られる。 ユーノはワインを空いたグラスに注ぐと、一口、ゆっくりと含む。 「じゃあ、屁理屈でも皆が幸せになれる方が良いよ。皆が皆異邦人なんだ。君だけじゃない。君は一人じゃない。それに………」 「う~ん……むにゃ……シンさん…ハメ技は酷いですよ~~」 シンの膝に頭を乗せたエリオが寝言を呟く。 エリオの寝言は、シンとユーノの間に生まれた沈黙にするりと入り込んだ。 ぷっ、とユーノが噴き出す。 戯れに、赤いエリオの髪を撫でると、ユーノはエリオに向けていた視線をシンに移す。 「少なくとも、この場に居る三人は君に居て欲しいって思ってるよ」 その言葉に、シンはただただ無言でゆるりと膝の上のエリオの横顔に視線を移した。 穏やかなその寝顔に、自然と笑みが零れる。 「ありがとう……ございます……」 ◇ ユーノは毛布を持ってくると、兄弟犬のように身を寄せ合って眠っているシンとエリオに優しくかけてやる。 その穏やかな寝顔に、つられて笑みが零れる。 「もう狸寝入りは良いよ、ヴァイス」 そうっと、シン達を起してしまわぬように囁かれた声に反応して、むくりと起き上がる人影。 ヴァイスは、苦笑を零すと、プルタブを開けていない缶ビールを手繰り寄せると、勢い良く流し込む。 「バレバレか?」 「大丈夫、シンは気付いてないよ」 二人が穏やかに寝入ってしまっているのを確認すると、ヴァイスはユーノの隣りに腰掛ける。 ヴァイスは黙ってユーノのグラスにビールを注ぐ。 「やっぱりユーノ先生に任せて良かったぜ」 「普段からおちょくるのを止めればいいのに……そうすればこんな役人任せにしなくても良かったんじゃないの?」 ヴァイスは首を振ると、普段は中々触れないシンの猫の毛のような髪を撫でる。 その感触が気持ち良く、何度も撫でるヴァイスの瞳は穏やかで柔らかい。 其処には、バカなことを言ってシンに冷たい目で見られていた姿は無い。 「いんや、やっぱりユーノが適任だったぜ」 「面倒見が良いんだね」 「そんな事は無いけどよ、まぁただこのツンデレボーヤが随分と思いつめてたみたいだからな」 「僕にはアレだけ六課の子達に好かれていて自分がここに居ていいのか不安に思えるこの子が少し不思議だけどね」 「コイツはまぁ、ガキのクセに随分と無くしちまったモノがあるみたいだからな。誰かがハッキリ居ても良いって言ってやらなきゃ信じられないんだろ……」 「………そっか……それは好きとは少し違うから……そうなのかもね………」 シンの鴉の濡れ羽色の髪を指先に絡めながらヴァイスはビールをあおる。 「しかしまぁ………ティアナ達もまだまだだねぇ」 「何がさ?」 「惚れた男の不安一つ摘み取ってやれねぇようじゃあ、まだまだ女の経験値足らねぇな」 「ふふふふ、仕方ないよ。彼女達も彼女達で大変なんだよ」 「ま、まだまだお嬢ちゃん達には可愛い弟達はやれないな」 「そうだね」 二人は顔を見合わせると小さく笑う。 シンは普段の険が取れた穏やかな子供のような寝顔をしていた。 ツンつん×デレでれ 13話へ進む 一覧へ
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エーデルヴァイス@wikiへようこそ! 10/23 たろうさんの浮気現場! (マウスで文字かけなかった><) ギルドイベント告知 イベントなにかあったら書き込みplz☆ このHPについて みんなで気軽にページを編集できるよう、wiki形式のHPにしました。 どのページも自由に編集することができるので、みんなで盛り上げていってください! ページの編集方法についてはMENUの編集の仕方を参考にしてください。 わからないことがありましたらあんこまたはわかる人までどうぞ!w エーデルヴァイスとは? Ragnarok OnlineのTyr鯖で活動するギルド。 ギルドマスターはユノカクロスこと我らがゆのっち! たまり場はプロンテラ道具屋奥になります。罠買う人たちお邪魔でごめん・・ 接続時間帯は夜~朝!?いる人は常時いるかもw Gvはしてません。ギルド狩(公平・非公平あり)とくだらない会話がメインです!
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autolink GC/S16-049 カード名:女神の微笑み カテゴリ:クライマックス 色:緑 トリガー:2 【自】このカードが手札からクライマックス置場に置かれた時、あなたは1枚引き、自分のキャラを1枚選び、そのターン中、パワーを+2000し、ソウルを+1。 集、楽しそう レアリティ:CC illust. ・対応キャラ カード名 レベル/コスト スペック 色 遠くを見据えるいのり 1/1 6000/1/0 緑
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八神はやて リインフォースⅡ シャマル ザフィーラ ヴァイス・グランセニック シャリオ・フィニーノ グリフィス・ロウラン アルト・クラエッタ ルキノ・リリエ 八神はやて(一人称:私) なのは:なのはちゃん 、なのは隊長、高町教導官 フェイト:フェイトちゃん、フェイト隊長、テスタロッサ・ハラオウン執務官 ヴィヴィオ:ヴィヴィオ スバル:スバル ティアナ;ティアナ エリオ:エリオ キャロ:キャロ リイン:リイン、リインフォース、リイン曹長 シグナム:シグナム、シグナム副隊長 ヴィータ:ヴィータ、ヴィータ副隊長 シャマル:シャマル ザフィーラ:ザフィーラ ヴァイス:ヴァイス君 グリフィス:グリフィス君 アルト:アルト ルキノ:ルキノ ギンガ:ギンガ ゲンヤ:ナカジマ三佐 クロノ:クロノ君 ロッサ:ロッサ、アコース査察官 ユーノ:ユーノ君 リンディ:リンディさん マリー:マリーさん レジアス:レジアス中将 オーリス:オーリス三佐 カリム:カリム シャッハ:シスターシャッハ、シスター エイミィ:エイミィさん アリサ:アリサちゃん すずか:すずかちゃん アギト:アギト スカリエッティ:スカリエッティ レティ:レティ提督 グレアム:グレアムおじさん リインフォース:初代リインフォース グラーフアイゼン:グラーフアイゼン リインフォースⅡ(一人称:私、リイン) なのは:なのはさん フェイト:フェイトさん はやて:はやてちゃん、マイスターはやて スバル:スバル ティアナ:ティアナ エリオ:エリオ キャロ:キャロ シグナム:シグナム ヴィータ:ヴィータちゃん シャマル:シャマル ヴァイス:ヴァイス陸曹 シャーリー:シャーリー アルト:クラエッタ二等陸士 ルキノ:リリエ二等陸士 ギンガ:ギンガ クロノ:クロノ提督 カリム:騎士カリム アルフ:アルフ アリサ:アリサさん 桃子:桃子さん ルーテシア:ルーテシア ゼスト:騎士ゼスト フリード:フリード リインフォース:先代リイン、リインフォース 蒼天の書:蒼天の書 レイジングハート:レイジングハート バルディッシュ:バルディッシュ マッハキャリバー:マッハキャリバー クロスミラージュ:クロスミラージュ グラーフアイゼン:アイゼン シュベルトクロイツ:シュベルトクロイツ 夜天の書:夜天の書 ストームレイダー:ストームレイダー シャマル(一人称:私) なのは:なのはちゃん フェイト:フェイトちゃん はやて:はやてちゃん、八神部隊長 ヴィヴィオ:ヴィヴィオ スバル;スバル ティアナ:ティアナ リイン:リインちゃん シグナム:シグナム ヴィータ:ヴィータちゃん ザフィーラ:ザフィーラ ヴァイス:ヴァイス君 シャーリー:シャーリー アルト:アルト ギンガ:ギンガ クロノ:クロノ提督 マリー:マリーさん カリム:騎士カリム シャッハ:シスターシャッハ リンディ:リンディ提督 レティ:レティ提督 すずか:すずかちゃん アギト:アギトちゃん クラールヴィント:クラールヴィント クロスミラージュ:クロスミラージュ ザフィーラ(一人称:私) はやて:主はやて ヴィータ:ヴィータ シャマル:シャマル アルト:アルト リインフォース:リインフォース ヴァイス・グランセニック(一人称:俺) なのは:なのはさん フェイト:フェイトさん はやて:八神隊長 リイン:リイン曹長 シグナム:シグナム姐さん ザフィーラ:旦那 アルト:アルト ラグナ:ラグナ ストームレイダー:ストームレイダー シャリオ・フィニーノ(一人称:私) なのは:なのはさん、高町一等空尉 フェイト:フェイトさん はやて:八神部隊長 ヴィヴィオ:ヴィヴィオ スバル:スバル エリオ:エリオ リイン:リイン曹長、リインフォースさん シグナム:シグナムさん ヴィータ:ヴィータさん アルト:アルト ルキノ:ルキノ ロッサ:アコース査察官 レイジングハート:レイジングハートさん グリフィス・ロウラン(一人称:僕) なのは:高町一等空尉 フェイト:テスタロッサ・ハラオウン執務官 はやて:八神部隊長 ヴィータ:ヴィータ副隊長 シャーリー:シャーリー ルキノ:ルキノ アルト・クラエッタ(一人称:あたし、私) なのは:なのはさん フェイト:フェイトさん はやて:八神部隊長 ヴィヴィオ:ヴィヴィオ スバル:スバル ティアナ:ティアナ キャロ:キャロ エリオ:エリオ リイン:リイン曹長 シグナム:シグナム副隊長 シャマル:シャマル先生 ヴァイス:ヴァイス先輩、ヴァイス陸曹 グリフィス:グリフィスさん ルキノ:ルキノ フリード:フリード ストームレイダー:ストームレイダー ルキノ・リリエ(一人称:あたし) なのは:なのはさん フェイト:フェイトさん シグナム:シグナム副隊長 ヴァイス:ヴァイス陸曹 アルト:アルト クロノ:クロノ艦長